Backlogの値上げを見て、SaaSにも借家権が欲しくなった
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「Backlogの値上げエグすぎ」SNSで悲鳴 ユーザー無制限プラン、月最低1.6万円→3.6万円に
Backlogの料金が上がる。現在は税別月1万6000円で使えるユーザー無制限のスタンダードプランが、2027年からは月3万6300円のビジネスプランになる。年間で約19万円から約44万円。二倍以上である。
ずいぶん上げるなあ、と思ったところで、ふと家賃を連想した。
賃貸住宅の家賃は、家主が「来月から二倍にします」と通知したら、そのまま確定するようなものではない。借地借家法には家賃の増減について定めがあり、金額で合意できなければ協議や裁判の余地がある。住む場所は生活の基盤なので、家主と借主の力関係だけで簡単に決められないようになっている。
一方、ヌーラボの利用規約では、料金を改定できること、重要な変更は原則三か月以上前に知らせること、同意できない契約者は解約できることが定められている。交渉して今までの料金で住み続ける権利はない。
嫌なら出ていってください。契約としては分かりやすい。
しかしBacklogを何年も業務で使っていたら、そこには課題、やり取り、設計資料、添付ファイル、誰が何を決めたかという履歴がたまっている。別のサービスへ移るには、データを運ぶだけでなく、社内や取引先の仕事のやり方まで変えなければならない。
形式上は月額サービスだが、利用する会社にとっては、だいぶ家や土地に近い。IT業界には、居住権どころか会社の生存に関わるようなSaaSがいくつもある。
Google WorkspaceのアカウントがBANされたら詰む、という話も同じである。メール、文書、カレンダー、社員のアカウント認証までGoogleへまとめていたら、止められた瞬間に会社のかなりの部分が動かなくなる。
Google Workspaceの規約にも、規約違反や緊急のセキュリティ問題などがあれば、サービスやアカウントを停止できると書かれている。もちろん不正利用や攻撃を止めるためには必要な仕組みだろう。でも自動判定や誤認で巻き込まれた側には、そんな事情は関係ない。仕事が止まる。
クラウドサービスを提供する会社にも、値上げする自由は必要だ。運営費は上がるし、安い料金のまま会社ごと死なれても困る。不正利用を見つけたら、すぐに止める必要もある。
それでも、業務基盤になったサービスを普通の月額商品とまったく同じに扱っていてよいのか、という疑問は残る。十分な告知期間、データを持ち出せる仕組み、アカウント停止への異議申し立て、移行が終わるまでの猶予。このくらいは、サービス会社の親切ではなく、利用者側の権利としてあってもよい気がする。
SaaSにも借家権のようなものが必要なのかもしれない。
「いつでも解約できます」は、「いつでも引っ越せます」と同じである。理屈ではそうだ。引っ越し先を探し、荷物を運び、住所変更を全部やる側には、そんなに軽い話ではない。