アイス価格カルテルとアイス過激派

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アイス価格でカルテル疑い 公取委、メーカーに立ち入り検査

アイスの価格をめぐるカルテル疑い、というニュースを見かけた。

カルテル。

悪そうな響きである。いや、実際に悪い。価格カルテルは普通に独占禁止法の話であり、企業同士が裏で価格を相談して市場競争を歪めるのはだめだ。そこは別に擁護するつもりはない。

ただ、最近の原材料費や物流費や人件費の上がり方を見ていると、企業側の気持ちも少しだけ想像してしまう。

アイスを作るにも、牛乳も砂糖も油脂も包装資材も冷凍物流も電気代もかかる。どれも安くなっている感じがしない。そりゃ値上げしたいだろう。というか、値上げしないと無理だろう。

では、いつ上げるのか。

いくら上げるのか。

それぞれの会社が勝手に決めるのか。誰かが最初に口火を切って、ほかの会社が少し遅れて追随するのか。全部の会社が黙って空気を読み合うのか。

たぶん、業界の中の人たちからすると、けっこう胃が痛い話なのではないかと思う。

「値上げしないと」

「でもうちだけ上げると売れなくなる」

「じゃあ業界として、だいたいこのくらいが妥当だよね、という空気を共有しておくべきでは」

「いや、それをやったら公正取引委員会案件では」

「なりますね」

みたいな会話があったのかどうかは知らない。完全にわたしの想像である。

でも、たぶん「あくどく儲けてやろうぜ」というより、「このままだと普通にきついので、どうにか値上げしたい。でも値上げは怖い。競合がどう動くかも怖い。消費者も怖い。小売も怖い。全部怖い」くらいの気分もあったのではないかと思ってしまう。

もちろん、それでもカルテルはだめである。

気持ちはわかる。だが、やってはいけない。大人の世界には、気持ちはわかるけどアウト、ということがたくさんある。会社員の経費精算とか、自治会の会計とか、町内の餅つき大会とかにもたぶんある。知らんけど。

一方で、消費者側の気持ちも想像してしまう。

アイスは生活必需品ではない。少なくとも制度上はそうだろう。米や水や薬ではない。

でも、夏のアイスはかなり生活に近い。かなり命に近い。暑い日にコンビニで買うアイスは、もはや小さな救命具である。ガリガリ君のソーダ味は、行政サービスで配布されるようになっても許される。

そう考えると、アイスの価格を裏で上げられたと思った瞬間に、静かに怒る人がいてもおかしくない。

いや、静かではないかもしれない。

アイス過激派である。

「おどれらが裏で俺の大事なアイスの価格を上げたんか、ああん」

そうつぶやきながら、アイス工場の前にたむろする人たち。

アイス過激派は、たぶん銘柄にうるさい。チョコモナカジャンボの板チョコの食感に一家言ある。雪見だいふくはあのサイズの二個入りであることに哲学を感じる。ピノのアーモンド味だけを箱で出せ派と、いやあれはアソートの中にあるからこそ輝く派で分裂している。アイスの実のカフェオレ味は美味いけどなにか違うと感じる。

そこに「価格カルテル疑い」である。

許されるはずがない。

いや、現実にはたぶん許すとか許さないとかではなく、公取委が調査して、事実関係を確認して、必要なら処分する、という話である。アイス過激派が冷凍ケースの前で決起する話ではない。

ただ、ニュースとしてはどうしてもそのくらいの温度差を感じてしまう。

企業側はたぶん、原材料費高騰の中でどう値上げするかに悩んでいる。消費者側は、毎日の小さな楽しみがまた少し高くなることに腹を立てている。法律側は、事情はどうあれ競争を歪める相談はだめです、と言う。

どの立場も、それぞれわからなくはない。

でも、わからなくはないからこそ、やっぱりルールは必要なのだろう。

値上げはしていい。というか、必要ならしないといけない。値上げせずに会社が潰れて、好きなアイスが消えるほうが困る。

個人的には、日本の食料品価格はちょっと安すぎると感じている。もちろん安いほうがうれしい。わたしも消費者なので、安く買えるならそれはありがたい。

ただ、海外、特に西洋諸国と比べて半額以下みたいな感覚になっているものを見ると、さすがに貨幣価値のズレが大きすぎるのではないかとも思う。安いことを良いこととして維持しすぎた結果、作る側や運ぶ側や売る側のどこかに無理が寄っているなら、それはあまり健全ではない。

わかりやすい例で言うとマクドナルドのビッグマックだ。ビッグマック指数の2026年1月の数字では、日本は480円。アメリカは6.12ドル、ざっくり1ドル160円で計算すると約980円。イギリスは5.29ポンド、ざっくり1ポンド200円で計算すると約1060円。もちろん為替や地域差や税制やサイズ感など、細かい話を始めるときりがない。

それでも、同じチェーンの同じような商品で、日本だけだいぶ安く見える。安くてうれしい、だけで済ませるには、ちょっと差が大きい。マクドナルドですらそうなのだから、国内の食料品全体にも似たような歪みがあるのではないか、と思ってしまう。

この話はインバウンドにもつながる気がする。海外から来た人がお金を使ってくれるのはありがたい。観光地も飲食店も小売も助かる。そこはもちろん良い。

でも、それが「日本の環境やサービスや食べ物や文化に高い価値があるから来る」というより、「異常に物価が安い日本で、為替差によって自国通貨が倍くらい強く見えるから来る」に寄りすぎると、なんか違う。安売り観光地として消費されるのは、たぶんあまり良い状態ではない。

日本に来る価値があるから来る、という話であってほしい。安いから買い叩ける、ではちょっと寂しい。

特にアイスのような嗜好品に近い食料品は、原材料費や人件費や物流費が上がっているなら、もっと自然に高くなってもいい。日本だけがいつまでも安いままで、働いている人や作っている会社が無理をするよりは、国際的な物価感覚に少しずつ近づいていくほうがまともな気がする。

だから、アイスが値上がりすること自体にはあまり反対ではない。

ただし、裏でみんなで相談して価格をそろえるのはだめ。

当たり前といえば当たり前なのだが、実際の商売の現場ではその当たり前がかなり難しそうだ。

そして今日も、冷凍ケースの前で人は悩む。

高くなったなあ、と思いながら、結局買う。

アイス過激派も、たぶん買う。怒りながら買う。

それはそれとして、チョコモナカジャンボはなるべくパリパリであってほしいものだ。

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