緯度と経度だけで思い出がよみがえる

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はてな匿名ダイアリー: シンプルに写真も良いし、音楽も当時の気分を新鮮に閉じ込めてくれるけれ..

Googleマップのタイムラインを見ると、昔の記憶がけっこう強く呼び戻される、という話を見た。

分かる。

写真が昔の記憶を呼び戻す、というのはみんながよく経験しているデフォルトの体験だろう。また青春時代に聴いていた音楽も、その時期の部屋の感じとか、歩いていた道とか、なんとなく着ていた服まで一緒に思い出すことがある。

それらと比べると、位置情報の履歴は一見かなり地味で、あまり記憶と結びついている感じがしない。しょせん緯度、経度、時刻が連なった数値情報のリストだし。

なのに、地図上にルート情報の線として表示されると、妙に思い出が戻ってくる。

ああ、この日は朝早めに家を出たのか。バイクで出かけたのか。暑い日だったな。風が生ぬるかった。そういえば、この店に寄ったっけ。期待していたほどおいしくなかったんだよな。

ただの地図上のルートから、そういう細かい記憶がよみがえってくる。

人間の数時間から数日の行動を記録する方法として、位置情報の履歴はけっこう優秀なのだと思う。

もしその間の動画を撮り続けていたら、見るのにかなり時間がかかる。倍速にしても、速くしすぎると何が起きているのか分からない。そもそもデータ量も大きい。

写真はもっと軽い。ただ、写真は撮った場所しか残らない。撮ろうと思ったものしか残らない。旅先で撮った景色や料理は残っていても、その前に道に迷ったことや、途中で寄ったコンビニや、なぜか妙に疲れていた夕方の記録は抜け落ちる。

位置情報の履歴は、情報量はかなり少ないのに、あらゆる行動の輪郭が残る。

しかも、これは旅行やイベントの日だけではない。スマホを持ち歩いていれば、普段の生活も記録される。あの日はあそこに買い物に行ったのか。あれを買ったんだな。ついでにあそこでご飯を食べたんだっけ。そんな小さい記憶が、地図上のルート情報から導かれてくる。

旅行アルバムには入らないような日でも、実際には細かい出来事がいろいろある。用事のついでに少し遠回りしたとか、いつもと違う駅で降りたとか、帰りに寄った店が思ったより混んでいたとか。そういうものは、日記にも写真にも残らないことが多い。

でも、地図には残っている。そしてそこから記憶に埋もれていた思い出が掘り起こされる。

もちろん、位置情報の履歴をずっと保存されることには気持ち悪さもある。どこへ行ったか、どのくらい滞在したか、どの店に寄ったか。それはかなり強い個人情報である。便利だし、懐かしいし、同時に少し怖い。

ただ、昔の日付を適当に開いて、少し移動距離が長そうな日のルートを眺めると、思ったよりも記憶がよみがえってくる。写真のように鮮やかではない。動画のように全部は残っていない。けれど、低解像度だからこそ、自分の記憶が勝手に隙間を埋める。

Googleマップのタイムラインは、記憶に対する低解像度な検索インデックスとして働く。

もしGoogleマップのタイムライン履歴が残っているなら、昔の適当な日を一つ開いてみると面白い。

写真に撮るほどでもなかった日のことを、地図が覚えていてくれるかもしれない。

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