人間は座ると長くなる
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https://news.livedoor.com/article/detail/31537909/
女性用トイレの行列問題について、国交省が初めてガイドラインを出したらしい。
男女の待ち時間が平等になるように、トイレの便器数を見直そう、という話だ。ニュースの見出しだけを見ると、女性用トイレをもっと増やすべき、という話に見える。実際そういう側面はあるのだろう。駅や商業施設やイベント会場で、女性用トイレだけものすごい行列になっている光景はよく見る。あれは普通におかしい。
一方で、男性側からの反発もまあまあ聞く。
男性用トイレを削って女性用を増やすのか。男性用の大便器が減ったら困る。男だって大便器には並ぶ。私もお腹ピーピー系の人間なので、その気持ちはわりと切実にわかる。小の人たちが高速で流れていく横で、大の個室だけ行列になることは普通にある。世界は小だけでできていない。
ただ、ここで男女の陣取り合戦みたいに考えると、話がだいぶ雑になる気がする。
本質は、面積や個数の平等ではなく、処理能力の平等なのではないか。
男性用トイレには小便器がある。あれはかなり強い。小専用の高速レーンである。立って、済ませて、流れていく。もちろん個人差はあるし、世の中にはいろいろな事情の人がいるが、設備としては明らかに短時間利用に最適化されている。
一方で、女性用トイレは小も大も基本的に個室に入る。小も大も化粧直しも着替えも、場合によってはスマホ休憩も、すべて個室という同じレーンに流れ込む。そりゃ詰まる。高速道路で、ETC車も現金車も大型車も休憩したい車も、全部ひとつの料金所に並ばせているようなものだ。
だから、女性用トイレにも用途別のレーンがあったほうがいいのではないか。
たとえば、速度特化の小向け個室。
小専用。短時間利用専用。広くない。ちょっと狭い。ちょっと座り心地が悪い。荷物は置けるが、くつろげるほどではない。鏡はない。スマホを置きやすい棚もない。照明は明るい。清潔で、安全で、使いやすい。でも長居には向いていない。
便座をずっと冷やす、という案も一瞬考えた。最初だけ冷たいのではなく、座っているあいだずっと冷やしてくる。長居したくない。退出を促す便座。
ただ、そこまでやると普通に怒られそうだ。人権という言葉が遠くから走ってくる気配がする。なので冷やすのはやめよう。せめて座り心地が少し悪いくらいで許してほしい。
要するに、快適性を上げすぎると回転率が落ちる。これはトイレに限らない。椅子がふかふかだと人間は長く座る。個室が落ち着くと人間はスマホを見る。人間は座ると長くなる。これはもう意思の弱さというより、生物としてそういうものだ。
もちろん、広い個室も必要だ。荷物が多い人もいる。子ども連れもいる。体調が悪い人もいる。着替えや生理用品の交換など、短時間では済まない用途もある。多目的トイレや広めの個室を減らせという話ではない。むしろ、用途の違うものを全部同じ個室に押し込めているから詰まるのだと思う。
男性用トイレだって、小便器と個室を分けているから流れている。もし男性用トイレが全部個室になったら、たぶん今よりずっと混む。男も座れば長くなる。男だから早いのではない。立っているから早いのだ。たぶん。
そう考えると、女性用トイレの行列問題は、単に女性用の面積を増やす話ではなく、女性用トイレの中に高速レーンを作れるか、という話なのではないか。小向け個室、通常個室、広め個室、化粧直しスペース。それぞれの用途を分けるだけでも、だいぶ流れは変わりそうに思える。
そして利用者側の自助努力も、まあ少しはある。
トイレの個室でスマホを見ない。化粧直しはできれば別スペースでやる。用が済んだら出る。言われなくてもそうしている人が大半だとは思うが、トイレ行列という現象を見ていると、どこかに滞留は発生している。設備側だけではなく、使い方側にも少しだけ回転率の意識があってもいい。
ただし、個人の努力でどうにかしろ、という話にしすぎるのも違う。全員が善良に高速利用しても、そもそも設備設計が詰まりやすければ詰まる。高速道路の車に「もっと速やかに通過してください」と言うだけでは渋滞はなくならない。料金所の数とレーンの種類も大事だ。
だから、女性用トイレにも高速レーンが必要なのではないか。
速度特化の小向け個室。
ちょっと狭くて、ちょっと座り心地が悪くて、でも清潔で安全で、用を足すには十分。
人間は座ると長くなる。ならば、長く座りたくならない座り方を少しだけ設計に入れてもいいのではないか。