アンチオカルトな星占いの効用

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heavymoons: 今日の星占い

heavymoons.netで星占いサービスを作っている。

占星術で使われているいろいろな計算式を組み合わせ、その数値を元にLLMで各星座ごとの日々の占いをフレーバーテキスト的に表示する仕組みだ。

画面としてはこんな感じだ。スマホ幅で蟹座を選ぶと、その日の肉体・精神・運の3要素と、ちょっとした占い文が表示される。

heavymoonsの星占いで蟹座を選んだスマホ画面。肉体、精神、運のスコアと占い文が表示されている。

少し下にスクロールすると、12星座すべての一覧も見られる。自分の星座だけを見るというより、全体の天気図を眺めるような画面にしている。

heavymoonsの星占いの12星座一覧。蟹座が選択状態で、牡羊座、牡牛座、双子座など他の星座カードも表示されている。

さらに、このサービスは結果だけを出して終わりではない。仕組みページでは、毎日12星座それぞれについて5種類の占星術計算を行い、その結果を肉体・精神・運の3要素として重み付けしていることを説明している。

具体的には、月とのアスペクト、曜日支配星と星座守護星の相性、月相とエレメントの相性、月のいる星座エレメントと自分の星座エレメントの相性、そしてボイドタイムの影響を使っている。

それぞれの要素も、ボイドタイム月のアスペクト曜日支配星 × 星座守護星月相 × エレメント月の星座エレメント × 自分という個別ページに分けて、何を計算しているのかを見られるようにしている。

つまり、占い結果だけをありがたく受け取るサイトというより、占いっぽい文章の裏側にある計算部品をバラして見せるサイトでもある。ここが自分で作っていて面白かったところだ。神秘のカーテンを少し開けて、中にスプレッドシートが置いてあるのを見せるような感じである。

そして最後にLLMがやっているのは、その確定した数値を読みやすいフレーバーテキストに言い換えることだ。AIが星から神託を受けているわけではない。数値を見て、それっぽい文章を書いている。かなり現代的な神託である。

こう書くと、なんだか急に本格的なスピリチュアルサービスを始めた人みたいに見える。ついに星と対話を始めたのか。大丈夫か。水晶玉は買ったのか。

大丈夫。水晶玉はまだ買っていない。

わたしは基本的に占いにあまり興味がない。占いを信じているわけでもない。朝のテレビで「今日の最下位は水瓶座です」と言われても、そうですか、くらいの気持ちで歯を磨く。そこで慌ててラッキーカラーの黄色いものを探したりはしない。そもそも黄色い服がない。

星の動きを使った計算式が存在することと、その計算式が実際にその星座の人の運勢を表していることは別の話だ。

これはかなり大事なところだと思う。

月がいまどこにある。惑星と惑星の角度がどうなっている。星座の支配星がどうこう。そういう計算はできる。できるものはできる。天体は動いているし、角度も出せる。数値も作れる。

ただ、その数値が今日のわたしの仕事運や対人運を表しているかどうかは、また別の棚に置かれている話である。棚が違う。隣の棚に勝手に移すと、店員さんに怒られるタイプの話だ。

それでも、占星術には古くから使われてきた計算式があり、それを元に占いを行う人たちがいる。

実際に星占いもどきを作ってみて、少し思った。

これは、もしかすると人間の生活リズムに対して、それとは少し違う別軸のリズムを添わせる装置なのではないか。

人間の生活は、かなり長いあいだ月や星の動きと一緒に管理されてきた。

一ヶ月という単位は月の動きと関係している。一年という単位は太陽や季節の巡りと関係している。暦というもの自体が、天体の動きを人間の生活リズムに落とし込むための巨大な変換装置みたいなものだ。

月や星が直接わたしのメール返信速度を左右しているとは思わない。満月だからSlackの返信が速い、みたいなことはたぶんない。

でも、月や星の動きから作られた暦は、人間の生活をかなり強く動かしている。月末締め、年度末、季節の変わり目、正月、お盆、祝日、給料日。こういうものは天体そのものではないが、天体の動きから作られたリズムの上に人間社会が積み上げたものだ。

そう考えると、星占いは完全な乱数とは少し違う。

日本では血液型性格診断みたいなものが雑談として妙に定着している。A型っぽい、B型っぽい、O型っぽい、AB型っぽい。人間を四種類に分けるには、さすがに棚が少なすぎる。

一方で、海外では自分の血液型を知らない人も珍しくないらしい。その代わり、星座による性格診断のほうが雑談として出てきやすい、という話を聞く。血液型は検査しないとわからないが、星座は誕生日がわかれば自動的に出る。入口が軽い。

しかも星座は、少なくとも生まれた季節のラベルではある。春生まれ、夏生まれ、冬生まれ。生まれてすぐに迎える気温、日照時間、外に連れ出される時期、学校に入るときの月齢差。そういうものが性格にどれくらい効くのかはわからないが、血液型よりは生活との接点がありそうだ。

もちろん、だから蟹座は優しい、と言い切るのは飛びすぎである。でも、生まれた季節という生活リズムの入口を、星座が雑に表していると考えると、完全な乱数よりは少しだけ人間の生活の近くにあるような気はする。

この「ちょっと関係ありそう」くらいの感じが、星占いのずるいところでもあり、面白いところでもある。

もちろん、科学的に「今日の牡羊座は活動的に過ごすべき」と証明されているわけではない。そこまで言い出すと急に怪しくなる。壺の足音が聞こえてくる。

ただ、人間の生活リズムとそれなりに近い周期を持つものを置き、その上がり下がりを眺めることで、自分の状態を考えるきっかけにはなる。

今日は運がいいらしい。じゃあ、少し面倒なことを片付けてみるか。

今日は静観の日らしい。じゃあ、無理に前に出ず、溜まっている細かい作業をやるか。

今日は内省の日らしい。じゃあ、いつもより少し早く寝るか。

そういう使い方なら、占いはそれほど悪くない気がする。

人間はいつでもフルパワーで動けるわけではない。毎日が最高効率です、みたいな人間はたぶん壊れる直前のリミッターが外れた人くらいだろう。

調子がいい日もある。ぼんやりする日もある。なんとなく気が重い日もある。理由がわかることもあれば、わからないこともある。

その横で、星占いが同じように上がったり下がったりしている。

自分の生活リズムと似ているような、似ていないような、少し外れたリズムが流れている。

それを見て、人間は勝手に意味を作る。

今日は休めと言われている気がする。

今日は少し外に出ろと言われている気がする。

今日は人に優しくしろと言われている気がする。

星はたぶん、そこまで言っていない。

でも、人間はそう受け取る。

そして、その受け取り方によって一日が少し変わるなら、それはそれで占いの効果なのだろう。

占いとは、未来を当てる技術というより、生活の横にもう一つ別のリズムを並べて置く技術なのかもしれない。

信じる、信じない、当たる、当たらない、という話にすると急に面倒になる。

でも、「今日はこういうリズムらしいですよ」と言われて、自分の生活を少し眺め直す。そういう道具だと思えば、占いは案外ちょうどいい。

わたしは占いには基本的に興味がなかった。

でも、自分で星占いサービスを作り、それを眺めるようになってから、占いというものの意義について少し考えるようになった。

星がわたしの運命を決めているとは思わない。

でも、星の動きから作られたリズムを横に置いて、それに人間が勝手に意味を読む。

そのくらいの占いなら、日々の生活に少し混ぜてもいいのかもしれない。

明日の星占いを見て、明日のわたしが少しだけまともに働く気になるなら、それはもう十分に実用的な機能である。

アンチオカルトな星占いの効用