DAZNの980円表示で思い出したWTA配信の嫌な記憶

【読むのに約 4 分】

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2606/12/news081.html

DAZNの料金表示がまた揉めているらしい。

ワールドカップ向けのDAZN Soccerが「月980円」に見える。でも実際には途中解約できない年間プランで、最初の3カ月が980円、その後9カ月が2600円、合計2万6340円になる、という話だ。

それは怒られるだろう。

細かい注記を読めば書いてあるのかもしれない。でも、ぱっと見た印象と実際の支払い額が大きく違うなら、ユーザーから見るとかなり不親切だ。注意深く読まなかったほうが悪い、という理屈は立つかもしれない。でも、そういう理屈で押してくるサービスを信用したいかというと、したくない。

そしてDAZNについては、私は以前からあまり良い印象を持っていない。

私はサッカーにはあまり詳しくない。DAZNを常用していたわけでもない。私が見るスポーツはテニスが中心で、男子テニスならWOWOW、GAORA、Tennis TV、U-NEXTあたりをその時々で使ってきた。

女子テニス、つまりWTAはそこまで熱心には追っていない。ただ、グランドスラムを見ていると女子の試合も目に入るし、日本人選手が出てくると気になる。伊藤あおいがWTAレベルの大会に出始めたころも、どこで見られるのかを調べた記憶がある。

そのときの印象がかなり悪かった。

当時、日本ではWTAがDAZNの独占配信だった。WTA公式のWTA TVも、日本からは契約できなかった。だから、日本ではDAZNで見るしかなかった。

でもDAZN上のWTAは、まともに見られる感じではなかった。メニューを探せばWTAらしきページにはたどり着く。でもそこにあるのは古い放送の名残のようなものばかりで、今やっているWTAツアーを普通に追えるサービスには見えなかった。

これが嫌だった。

権利を持っていないなら仕方ない。別のサービスを探す。でも、日本ではDAZNの独占配信で、WTA TVにも契約できない。そのうえDAZNでまともに見られないなら困る。視聴者からすると、見られる場所を一つに絞られたうえで、その一つがちゃんと機能していない、という状態になる。

これは契約違反だとか、そういう話をしたいわけではない。そんな契約の細部は外から分からない。私が言いたいのはもっと単純な話だ。

独占しているなら、ちゃんと見せてくれ。

見せないなら、どこで見ればいいのか分かるようにしてくれ。

それだけだ。

善管注意義務という言葉がある。法律上の正確な意味はさておき、感覚としてはそれに近い。権利を持っているなら、持っているなりにきちんと扱ってほしい。配信するなら配信する。終わるなら告知する。別の視聴方法があるなら案内する。視聴者がどうすれば見られるのか分かる状態にしてほしい。

今回あらためて調べると、WTAとDAZNの関係はかなり大きい。WTAとPerform Groupが2014年に発表したメディア権契約は、2017年から2026年までの10シーズンで5億2500万ドル超というものだった。Perform GroupはのちのDAZN Groupで、この契約のもとでWTA Mediaという枠組みが作られた。

Telstraの事例紹介では、WTA MediaはDAZN GroupとWTAのジョイントベンチャーで、55大会規模のメディア権を扱い、年間2500試合以上の映像を制作・配信する仕組みだと説明されている。つまり、DAZNとWTAの関係はかなり深い。

一方で、2025年には日本のDAZNでWTAをほとんど追えなくなっていた。これは私も経験したし、ネット上にも同じような証言が残っている。DAZNがWTA配信終了をはっきり告知した形跡も、少なくとも私は見つけられていない。

契約期間はまだ残っているように見える。DAZN上ではまともに見られない。終了告知も見つからない。ユーザーから見ると、これはかなりつらい。

今はWTA TVで見られそう

2026年6月時点でDAZN Japanのテニスページを見ると、通常のWTAツアー配信らしいものは見当たらなかった。サバレンカ対キリオスのエキシビションや、いくつかのリニアチャンネルが出ているくらいだった。少なくとも「ここでWTAツアーを追えばよい」というページには見えない。

一方で、WTA TVの購入まわりを確認すると、今は日本から契約できそうに見える。WTA TV側の国判定APIは私の環境をJPとして扱い、購入APIは月額1100円、年額8256円の日本円プランを返してきた。実際にカード決済まで通したわけではないが、少なくとも入口で日本が弾かれている状態ではなさそうだ。

昔の「日本ではDAZNの独占配信だからWTA TVに契約できない」という状態は、今はもう解除されている可能性が高い。そこは良かった。

ただ、買えることと、見たい大会が全部見られることは別だ。スポーツ配信はそこが面倒くさい。契約できた。さあ見よう。あれ、この大会は対象外なのか。そういうことが普通に起きる。油断できない。

WTA全体としては、DAZN/Performとの10年契約が2026年までで、WTA Venturesという商業部門も2023年に立ち上がっている。これからはWTA Ventures主導の売り方に移っていくのだろう。日本から見るなら、DAZNではなくWTA TVや大会ごとの配信情報を確認するほうが現実的そうだ。

うーん。

これを調べるほど、やはりDAZNへの印象は悪くなる。DAZNが全部悪い、とまで言うつもりはない。権利関係は複雑だろうし、外から見えない事情もあるだろう。

でも、視聴者はそんな事情を見たいわけではない。試合を見たいだけだ。

日本ではDAZNでしか見られなかった。だからDAZNに行く。なのに見られない。終わったのかどうかも分からない。別の視聴方法も案内されない。

それは普通に邪魔だ。

少ないユーザーだから大きな騒ぎにならないだけで、困っている人はいる。Jリーグやワールドカップなら怒る人が多い。炎上する。会社も謝る。でも、WTAのようなニッチ寄りの配信では、困っている人がいても声がまとまりにくい。結果として、よく分からないまま放置される。

今回のDAZN Soccerの料金表示の件を見て、私はサッカーの話というより、昔WTA配信を探してDAZN上で困ったときのことを思い出した。

ああ、またDAZNか。

DAZNへの印象は、もともと十分に悪かった。これ以上悪くなりようがないくらいには悪かった。

ところが今回の件で、さらに悪くなった。まだ下がる余地があったのか、と思った。

参考: ITmedia / 日刊スポーツ / Guinness World Records / Telstra International / DAZN 2024リリース / DAZN Japan テニスページ / BNP Paribas Open WTA TV説明 / WTA TV 購入API / WTA Ventures発表