人間が乗っている時点で邪魔
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Togetter: 「前リュックは迷惑、手に持って」と鉄道会社は呼びかけるけど、防犯・痴漢冤罪・足元の安全を考えると正解がなさすぎる…満員電車の問題を謎マナーに論点をすり替えてない?
電車の中でリュックを前に抱えるのは迷惑なので、手に持つか網棚へ置いてほしい。最近はそう案内する鉄道会社もあるらしい。
もともとは、背中に背負ったリュックが後ろの人へぶつかるから、前に抱えましょうという話だったはずだ。それが今度は、前に抱えても場所を取るから迷惑だという。
まあ、人間が電車に乗っている時点で、ある程度は邪魔である。
立っているだけでも床を使う。座れば座席を一人分使う。冬に厚いコートを着れば少し膨らむ。大きな人もいれば小さな人もいる。人間は電車内に存在するだけで容積がある。
そのうえリュックまで持ち込めば、そりゃ多少は邪魔になる。だからといって、ちょっとでも邪魔になった事例を見つけて、その持ち方はすべて悪である、と決めるのは雑すぎる。
背中に背負ったままだと、自分から荷物が見えない。中身がパンパンのリュックを、後ろの人へ押しつけていても気づきにくい。空間を管理するという意味では、少なくとも見える前側へ持ってきたほうがやりやすい。
前に抱えれば、防犯上も多少安心できる。男性側としては、両手を高い位置へ出したり、前の人との間に荷物を置いたりできるので、痴漢と間違われないための動きとしても意味はあると思う。
ただし、前に抱えたリュックを台にしてスマートフォンを操作し、肘を横へ張り出したら、それはそれで邪魔である。リュックの位置だけ正解にして、その周りで腕を好き放題動かしてよいわけではない。
手に持って足元へ下げる方法もある。上半身の空間は空く。しかし電車が駅に着いて人が動き始めると、今度は人の脚に近いところへ荷物が来る。置いたままスマートフォンに夢中になっていたら、人波に押されるか、荷物だけどこかへ行くかもしれない。
床へ置くなら、停車前に持ち上げられるだけの余裕が必要になる。あまりに混んでいると、かがむことも、持ち手へ腕を伸ばすこともできない。置いたときには正解だったのに、二駅後には回収不能になることもある。
網棚も同じだ。使える場所に立てて、降りる前に取り出せるなら便利である。網棚から遠いところに押し込まれたり、降車駅まで身動きできなかったりするなら使えない。うっかり忘れるという伝統的な事故もある。
結局、どれも一長一短である。
十分に空いている電車なら、背負ったままでも大きな問題はない。背中を壁へ向けて立てるなら、後ろの人へぶつけることもない。混んできたら前へ回す。人が乗り降りするときだけ持ち上げる。網棚が使えそうなら使う。
鉄道会社としては、車内放送やポスターでそこまで細かい条件分岐を説明できない。「混雑度がこのくらいで、ドアから何メートル以内にいて、次の駅で降りる場合は」などと言い始めたら、誰も最後まで聞かない。だから「手に持ってください」くらいに単純化するのは分かる。
でも、その単純化された案内を、乗客側が絶対的なマナーへ昇格させる必要はない。
特定の状況で、特定の優先順位を使って出した答えを、いつでもどこでも正しい答えとして振り回す。それはマナーに詳しいというより、考えるのをやめただけではないか。
背負えば後ろが見えない。前なら荷物を管理しやすい。下へ持てば上半身は空く。網棚は使えるときには便利。そのくらいの大枠を頭に入れておいて、毎回の状況に応じて決めればいい。
毎駅ごとに高度な最適化問題を解けという話ではない。たまにスマートフォンから顔を上げて、自分と荷物が周囲でどうなっているかを見る。それで十分だろう。
人間も荷物も、電車に乗れば多少は邪魔になる。その多少の邪魔を、お互いにその場で調整しながら運ぶのが公共交通機関なのだと思う。
前リュックが邪魔。手に持っても邪魔。床に置いても邪魔。スーツケースもベビーカーも邪魔。周囲にあるものを次々と邪魔認定していくと、最後には「邪魔だ邪魔だと言い続けているあなたの存在が一番邪魔」という話になってしまうのでは?