丁寧語によって値段が不明瞭になる問題
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総菜屋で、出来立ての商品を「お付けしてもいいですか」という感じで勧められ、客が有料なのか確認したら有料だった、という話を見た。
かなり誤解しやすい接客ではある。
売る側からすると、売り場で商品をすすめているのだから、有料なのは当然なのかもしれない。惣菜屋で「こちらもお付けできます」と言えば、それは追加購入の提案であって、無料プレゼントではない。店員側の常識では、そこに値札が見えているのだろう。
しかし買う側からすると、「お付けする」はかなり無料サービスっぽい言葉である。おまけをお付けします。試供品をお付けします。今なら一品お付けします。そういう記憶が先に立つ。
同じ言葉を聞いていても、売る側は「追加購入の提案」として聞き、買う側は「無料サービスの確認」として聞いている。売り場の内側では有料だったものが、カウンターを越えた瞬間に無料っぽく変化する。
店員に悪意があったかどうかは分からない。接客マニュアルにある言い回しだったのかもしれないし、単に若い店員が言葉を柔らかくしようとして失敗しただけかもしれない。
ただし、悪意がなければ問題がない、という話でもない。誤解の余地をなくす努力をするべきなのは、基本的には売る側である。商品を売り、値段を知り、お金を受け取る側が、「これは有料です」「追加で○円です」と分かるように言うべきだ。
買う側は、その店の接客コードを知らない。その商品が定番なのか、キャンペーンなのか、試食なのか、おまけなのか、追加購入なのかも分からない。買う側に、店のローカルルールを押し付けてはいけない。
この手の誤解は、日本語の丁寧さとも相性が悪いのだと思う。日本語では、丁寧に言おうとすると直接性が下がることが多い。
「買いますか?」は露骨だが、「ご一緒にいかがですか?」なら接客らしい。「追加で○円の商品を買いますか?」はさらに露骨だが、「お付けしてもよろしいですか?」になると、かなり柔らかい。
しかし、柔らかくしたぶんだけ、輪郭がぼやける。売る側は有料の追加購入のつもりでも、買う側には無料サービスの確認に聞こえる。丁寧語が値札の存在を曖昧にしてしまう。
接客では丁寧さも大事だが、お金が発生する場面では明確さのほうが大事だと思う。「出来立てなので、追加でいかがですか。○円です」。それで十分丁寧である。むしろ、値段をはっきり言うことこそ丁寧なのではないか。
とか言うと今度は、無礼な物言いをする店員だ!と怒る客が現れたりして……。